魏延伝
第6章 本音
「我・・・戦コソ全テエェェェェェ!!!!」
魏延と馬岱は反乱を起こした。
相反する楊儀。だが、彼に魏延と馬岱を止める術など無い。
「我ヲ・・斬レル者ハ・・・居ルカァ!!!」
楊儀の兵は恐れおののいている。
当然だ。猛将魏延を斬れる者など、今の蜀にはいない。
いや、たった一人を除いて。
手はずは済んでいる。楊儀は恐れとともに、勝利の確信も持っている。
兵士達の多くはそのことを知らない。だが、関係なかった。この兵士達には計画は邪魔されないだろう。ここで乱戦になってしまっては元も子もないが、魏延に飛び掛ろうとする兵は一人たりともいなかった。
「フン・・・雑魚ドモメ・・・・」
一瞬、魏延の肩の力が緩んだ。
楊儀はそれを見逃さなかった。楊儀は彼に目で合図を送った。
「魏延殿!!お覚悟っ!」
背後から魏延に切りかかる馬岱。
しまった!と馬岱は思った。それはほんの0.1秒以下の判断だ。踏み込みが浅い。馬による加速があるとはいえ、これでは確実に魏延を殺す事は出来ないかもしれない。いや、魏延ほどの猛将ならば、受け流して反撃される。
だが、馬岱は見た。魏延がかわせるはずの攻撃をかわさず、少し笑みを浮かべて自分を見ていることを。
まさか・・・斬られる事を望んでいるのか!?そう思ったが、既に体は勢いがついていて、止める事などかなわない。
馬岱の槍は魏延の体を貫いた。
「魏延殿・・・まさかこうなる事を知っていて・・・」
馬岱の謀反は虚偽である。魏延の隙を突くための。
「・・馬岱・・殿・・・礼ヲ・・言・・ウ・・・」
ごふっ、と大量の血を吐く魏延。
小さくつぶやいた。
「藍月・・・愛している・・・」
その声はあまりにも小さかったが、そこにいる全ての者に聞こえた。
その声は先ほどまでの魏延とは全く違う優しい声だったが、誰も疑問に思わなかった。
がくっと全身の筋肉の緊張が解ける魏延。
反乱者を仕留めた馬岱は勝ち鬨を上げるのも忘れ、呆然としていた。楊儀も同じである。
完全な静寂があたりを包んだ。
はらりと落ちる魏延の仮面。
そこに居合わせた者全てがその美しさに目を奪われた。
そして、意味もわからずに涙が流れた。
魏延を乗せたまま、馬が一声哀しげに嘶いた。
建興十二年秋、征西大将軍魏延。
死亡。
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