魏延伝

章  想い。

目が醒めた。

目は開いているものの、意識は朦朧としたままであったが。


「・・か。・・・あ・・」

「・・・さ・・。・・に・・・」


声が聞こえる・・・うるさい・・・。

静かにしてよ・・。


「あーーーいーーーかーーー!!!」



その声は更に大きくなって、耳に飛び込んできた。



「全くこの子は・・・」

「だめですよ、無理をさせては」



あいか・・・藍月・・私の名前・・・呼んでいるのは・・誰・・??


「怖い目に合ったんだから仕方無いんだけどね・・。意識は戻ってるみたいだけど・・・」

「ほら、今はそっとして置いてあげましょう・・」

「うん・・。」



あぁ・・そうだ・・

「優蘭・・・殊璃・・・」


「藍月!気が付いたのね!よかったぁ・・」

さっきから大きい声で騒いでるのは優蘭(ゆらん)。

一緒にいる控えめな子が珠璃(しゅり)。

そして私が藍月(あいか)。

いわゆる、『仲良し3人組』みたいなものだ。



「私・・・」

そうだ・・山賊に夜襲を掛けられ、そして連れ去られた・・・。

でも・・此処は・・


「でも、吃驚したわよ!まさか、あの魏延様に助けられたなんてね」


魏延・・様・・・・??

「魏延さま!?」

つい、突拍子も無い声が出てしまった。

最近、劉備様を慕って蜀に降った1人の猛将がいるとは聞いていた。

諸葛亮様によると、「反骨の相」が在るらしい。

あまり、印象の良い人とはいえない。


魏延さま。

敵だけではなく、味方にも恐れられている人。

あの、血を流しながら私を抱えていた人が。

あの、低く、恐ろしい声をした人が。

あの、余りにもいびつな鎧を着込んだ人が。



「そうですね。戦場に出ては鬼のような形相で、血も涙も無いなんて噂されていますわね。その魏延様が人助けとは・・」

「私も信じられなかったわよ。間違って藍月を斬っちゃったって言うんなら納得できるんだけどね」

「ちょっと、優蘭さん。それは笑い事ではありませんよ」

「助かったんだから良いじゃない、ね?」



魏延さま・・。

私を助けてくださった人・・・。

でも、それだけじゃない。何か・・気になる。


「ちょっと藍月、聞いてるの?」

「え・・あぁ・・うん・・・」



なんだか頭がもやもやする。なんだろう?



「藍月さん・・ひょっとして・・・」

「ん?何よ。珠璃ったらニヤニヤして・・・」

「藍月さんに春がきたのですよ」

「春って・・・えぇっ!そうなの!?藍月!?」


何を2人で盛り上がっているのだろう・・・


「もぅっ。この子ったら、まだぼうっとしてる」

「あらあら」


「あら、いけない。優蘭さん、そろそろ仕事に戻りませんと」

「うん。藍月はしばらく此処で休んでてね。私たち、仕事行ってくるから」



そそくさと部屋を出ようとする二人。



「待って!」

「どうしたの?」

優蘭が心配そうに駆け戻ってくる。


ほとんど、何も考えずに言葉が出てきた。

「私、魏延さまのお世話がしたいの」


顔を見合す優蘭と珠璃。

「あらあら」

「本気で言ってるの・・?」


「あの・・・だって・・命を助けられたわけだし、恩返ししなくっちゃ」

本心である。とにかく、御礼をしないと。



「分ったわよ。何とか話し付けて来てあげる」

優蘭は女官の中でも私なんかよりも権力がある。本当ならきちんと敬語で話さないとダメなんだけどね。3人だけになると、すぐに普通の女の子に戻っちゃう。

あ、珠璃は小さい子供が相手でも丁寧語。

私はこの二人が本当に大好きだ。



「あの・・それと、ごめんね・・。心配かけちゃって・・」

「あらあら。あなたが無事で何よりですわ」

「そういうこと。ま、とにかくもうしばらく休んでると良いよ」

「うん。ありがとう」



なんだか心地よく眠れそうだ。

つづく。







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