*月*日

 さて、再度神殿に侵入。おっさんは居なかった。
 ツーかもう、アッチコッチ走らせるのやめろ。そろそろゾーゴンの首を頂くぞ。

 どんどん上へと進んでいくと、全く雰囲気の違うフロアに到着。そろそろか?くっくっくっ。

 いたー!!

 見つけたぜゾーゴン。絶望にうなれ。


 俺みたいな強い香具師が居ることは竜の一族として誇りらしい。

 はっはっは。残念ながら、俺は強いがてめーは雑魚だ。

 で、「強い者にこそ価値がある・・・」とか言い出す。そこは同感だな。俺最強。で、世界が発展するには誰かが統治しなきゃいけないとか。それは俺の役目であって、てめーの役目じゃないコトをわからせてやらないとな。

 で、いきなり変身するゾーゴン。



 やべぇ。

 俺に比べたらすげぇダサいけど、でかい。てかキモイ。死ね!

「ドラゴン・ソウル」発動。


 ヤベ・・・あいつまだピンピンしてやがる。俺が死ぬわ。雑魚が調子に乗りやがって。クズが。

 俺も変身して応戦。ゾーゴンは思いのほかタフすぎてウザイ。

 ふはは。しかし所詮は雑魚だな。ボコボコにしてやった。


 そしたら「俺に代わって俺たち竜の一族の時代を築かないか?」とか持ち掛けられる。
 バカな。俺は俺だ。お前の代わりになるつもりなど無いわ。
 と、その瞬間、床が崩れた。


 落ちる俺たち。死ぬって。






 どうやら、生きてた。

 すげーキレイなねーちゃんに声かけられた。
 誰だ。
 みた事ある顔。
 みた事ある声。
 懐かしい感じ。





 そう。





 姉さんだ!



 姉さんだ!




 無事だったんだ!!うおおおおおお!!!

 くそあちぃ。はぁはぁ。


 ビルダーが泣いている。

 やめろって、泣くなバカ。駄目だっつーの。バカ。なんでてめーが泣くんだ。死ねばか。


「ゾーゴンの穢れた野望は、伝説のとおり、勇者達によって崩れさった」
 伝説とかよく知らんが、姉さんが言うにはそうらしい。



 最後の一つ。女神のカギがココに揃った。

 姉さんが全てのカギを封印する。俺はそれを渡した。



 姉さんの表情が変わった。


 声が。
 顔が。
 雰囲気が。



 違う。

 やめろ。






「ジュダス様、女神のカギを手に入れました」

 突然、その男は現れた。


 俺たちを帝都に迎え入れ、ドラゴン・ソウルの存在を教えたおっさん、それこそが四天王最後の一人、ジュダスだった。


 そして、姉さんは姉さんではなかった・・・。


 いや、姉さんは姉さんだ。ジュダスの術で操られているのだ。



 なんだこれ。

 クソが。


 クソがっ!!





 姉さんとジュダスは共に消えた。パスラの浮島にて女神の封印を解くとか言って。
 女神?知るか。
 封印?知るか。
 世界?知るか。
 伝説?知るか。




 でも殺す。
 俺はなんとしてもあのボケジュダスを殺す。




 しかし、困った事にココに出口はない。何故すぐに気付かんのだ。こんなところに姉さんが居るわけないのだ。クソが。
 いいように操られたってか。クソが。
 死ぬまで此処で呆然としろってか。ふざけんな。


 と、ちょうど良いタイミングで土喰い族の香具師が床から飛び出した。

 くく。馬鹿め。天は俺に味方した。出られるぞ。
 モグも手伝って、地中を駆けずり回る。


 どうやら土が硬くて進めない場所があるらしいが、土掘り名人、ホリススム君とやらが気合一喝。大穴をあけやがった。
 ほかの土喰い族もモグも見ほれてる。職人芸ってやつだな。よくわからん。
 とにかく急いで後を追った。



 って・・・浮遊要塞とやらの発掘現場に戻ってしまった。黒竜族どもはゾーゴンが死んでから、パニック起こして逃げたようだ。






 寝てる間などない。浮島に直行した。
 大急ぎで最上階を目指す。と、姉さんが居た・・・。

 ジュダスを止めてくれとか言う。
 と、止めさせはしないとか言う。


 そうか。姉さんはまだ完全に操られてるわけじゃない。姉さんも戦ってるのだ。
 フラフラと上へ向かう姉さん。おいかける。


 更に更に上へ。ジュダスが居た・・・が、それは封印とやらを解いた直後だった。間に合わなかった、が、そんなことは関係ねぇ。俺の目的はジュダスを殺すことだ。

 逃げるジュダス。とにかく追った。
 どうやら、浮島からまったく別の場所にワープしてしまったようだ。
 そんなことはどうでも良い。俺たちはガムシャラに先を目指した。


 小さな部屋で、結界のようなものに遮られた。うぜぇ。クソが。


 姉さんが現れ、死に物狂いで結界を解いてくれた。ジュダスの術がヘボイのか、姉さんの精神力が強いのか、時折正気に戻る姉さん。その顔はどこまでも優しく、そして傷付いていた。

 突如、姉さんの顔つきが変わ・・・・いや、変身した。ドラゴンに。


 ふ・・・ふふ。馬鹿め。姉さんを傷つけることなど出来ないが、これはもはや姉さんじゃない。

 いや、違う。ドラゴンに変身できるということは、つまり竜の血の証。それは姉さんである証・・・。


 姉さんの攻撃は大振りで、全く的を得ていない。ただ暴れるだけのように見える。
 だが、違う。よく見ると、姉さんはわざと攻撃を外している。いや、外させているといった方が正しい。俺たちを殺そうとするジュダスの術と、本当の姉さんがせめぎあっている。

 しかし、それでも今までの敵とは一味違う。ゾーゴンよりはるかに強い。恐らく、姉さんの魔力の為だろう。

 へっ。だがなぁ・・・・この程度でよぉ。姉さんを操ろうだ?俺に勝とうだ?5億年早ぇ。
 本当の姉さんはこの程度じゃねぇ。なんせ、俺様の姉貴だぜ?

 俺たちは戦った。姉さんもそれを望んだ。


 ジュダスよ。

 消 え ろ 。 



 ジュダスの術は消え、姉さんは完全に姉さんに戻った。
 しかし・・・・だめだ。姉さんは全ての魔力と体力を失いつつあった・・・。


 姉さんが・・・死ぬ?



 涙が溢れそうになった。



 ばかやろうが。何のためにここまできたと思ってんだ・・・・
 俺が旅に出たの目的は復讐や襲撃じゃねぇ・・・奪還だ。

 ふざけんじゃねぇぞ。なんだこれ。どうして俺の思い通りにならない?どうして姉さんが傷付かなきゃならない?
 それも・・・

 それも、この俺の手で。


 俺が、姉さんを殺すのだ。


 ・・・・・・・

 何故だ。


 ゾーゴンは倒したんだぞ。


 封印とやらを解く事でジュダスの目的も果たされたんじゃ無いのか?



 なぜ、今になって姉さんが死ななきゃならない?
 なぜ、今になって姉さんを殺さなきゃならない?


 クソが。俺は世界一強ぇんだぞ?なぁ、神よ。見てるんだろ?死にたくなければ姉さんを生き返らせやがれ・・・・なぁ・・・・・・ぶっ殺すぞコラ・・・頼むから・・・・。


 姉さんが息を切らせながら俺を叱った。涙など見せてる場合じゃない、と。
 へ。そうかい。ちくしょう。何でだよ。ちくしょうが。

 理解できっかよ。
 納得できっかよ。

 姉さんは言う。
「あなたのしたことは正しい」


 ふざけんな。わかんねぇよ!意味わかんねぇよ!!
 正しいだと?
 俺は姉さんを殺すんだぞ?何が正しいんだよ!
 世の中のやつらみんな死んだって知ったこっちゃねぇ!でもな!ずっと俺に付き合ってきたこいつらと、あんただけは死んじゃ駄目だ。生きる義務がある。
 わかるか?世界の王になれる実力を持った俺の命令だ。頼むから死ぬな。生きろ。生き続けろ!!




















 世の中、如何にもならないことがあるらしい。























 姉さんは微笑みながら、眠るように死んだ。














 姉さんが、死んだ。


























 俺が、殺した。









































 俺が、姉さんを、殺した。



















 皆が言う。姉さんは苦しみから開放されて、俺に再会して、満足して逝ったのだ、と。

 バカな。

 何が満足だ。

 死んだんだぞ?




 姉さんの最後の笑顔が脳裏に焼き付いて離れない。
 俺の頭の中で、姉さんが微笑み、手を振り、俺様に説教する。

 姉さんはどこまでも姉さんだ。
 俺のこの身体の中に、姉さんと同じ血が流れている。




 よかろう。



 姉さんが憂いていた、世界の破滅。







 この俺が止めてやる。








 一番奥に、ジュダスは居た。
 強さは素晴らしい。女神を復活させたのだ!とかほざいてる。
 ほんとアホだな。女神は強いか知らんが、てめーは雑魚だよ、と。
 チカラを見せてやろうとか言って塔を破壊するジュダス。うぜぇ・・・・・












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