イエローバースデー






せまくて暗いセカイ。

それでも良かったんだ。このセカイの事なら何でも分かるから。

恐怖は無知から生まれるって知ってるから。
だから、このセカイでは何も怖いことがない。




それなのにどうしてだろう?


ボクは右腕を伸ばしてみるんだ。


こつん。

こつん。


セカイの終わりが、手の届くところにある。
何も不満はない。
怖いこともないし、悲しいこともないよ。


こつん。

こつん。


どうしてボクは手を伸ばすんだろう?


こつん。

こつん。


欲しいものもない。したいこともない。


このセカイにいる限り、ボクは幸せなんだ。
つらいこともない。痛いこともない。

外のセカイなんて知らない。必要ない。知ってるこのセカイが全部。



でも、ここにはキミがいない。


たったそれだけのことが、ボクの手を動かす。


こつん。

こつん。


ボクの右腕はやわらかい毛で覆われていて、
それが何のためにあるのかは分からないけど、
とにかく、
このセカイを壊すにはあまりに弱かった。

ボクの左腕はやわらかい羽毛で覆われていて、
それが何のためにあるのかは分からないけど、
とにかく、
このセカイを壊すにはあまりに弱かった。


ボクの右足は小さすぎて、
セカイの端っこに届かない。

ボクの左足は小さすぎて、
セカイの隅っこに届かない。


何を焦っているんだろう?

キミが居なくたって、ボクはこのセカイで幸せなはずなのに。


セカイを壊すだって?どうして?何のために?知らない。わからない。


こつん。

こつん。


どうしてキミはボクを迎えにきてくれないの?





ぼくは知っているのに、わかっているのに、それをやらない。

知らないを知ることを怖がって。
キミに逢うのが怖いから。


それでもボクは、
やわらかい腕を振り回して。
短い足をじたばたさせて。

それでもボクは・・・・




ガシッ

ガシッ




口もとに硬い感触が伝わって、見たことのない・・・そう、知ってるぞ。
ヒカリ。

ヒカリが見えた。


ガシッ

ガシッ


まぶしい。
自分がどれだけくらいセカイにいるのかを思い知らされる。

怖い。
知らないそれを知るのが怖い。


ガシッ

ガシッ


それでも、ボクは止まらなかった。



今日、キミに逢うため、生まれてみようと思う。




ガシ・・・・・ッ







SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送