蟷螂の夜
「逢えなくなってはじめて気づいた」
いいえ、嘘。
あたしは知ってたの。
あなたと別れること。
とってもとっても大好きだったから。
ずっとずっと一緒にいたかったから。
だから愛すること 怖かった。
だから愛されること 恐れていた。
あたしは知ってたの。
あなたも知ってるくせに。
どうして止まれなかったの。
あたしたちは結ばれない運命。
結ばれてはいけない運命。
大好きだったから。
あぁ、憎い。
この両手が憎い。
私の本能が憎い。
あなたの本能が憎い。
あなたの血は新しい命の息吹。
あなたの肉は新しい命の心。
あなたの命はあたしの手で切り裂かれ。
あたしは運命の意図を切り裂くことはできなかったわ。
もう二度とあなたには逢えないけれど。
あなたと愛し合った証を忘れはしない。
とても美味しかったあなたの味を忘れはしないわ。
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