沈黙
「好き」
そう言ったあなたの優しい声を忘れはしないわ。
決められたレールの上を生きてきただけのあたし。
あなたの一言で生まれ変わったあたし。
でも、あたしは知ってるの。あなたのその声はあたしの向こう側へ向けられたものだと。
あれから一年。
あなたは毎日のように囁きかける。
あたしはあなたの愛の言葉にうっとりするの。
「好き」
そう言ったあたしのかわいい声はあたしじゃないわ。
向こう側の誰かの声の真似をするだけのあたし。
でも、あなたは知らないの。あなたに微笑むその声にあたしの心こめられてる事。
あなたは何も知らずにあたしを置いて、この部屋を出て行った。
何もできないあたしは呆然とあなたを待つだけ。
あれから七日。
あたしは毎日あなたを思い焦がれる。
あなたはあたしに逢いに戻ってきてくれたの
さあ、あたしを連れてって。あたしはもう話せないけど、あたしの心はいつもあなたと。
あなたは何も言わずにあたしの背中、さすってたぐり寄せた。
何もできないあたしは呆然とあなたを待つだけ。
でも、あたしは気付いたの。あなたが戻ってきた理由。あたしの心を停めてしまうこと。
あなたは何も知らずにあたしの命、この部屋で終わらせる。
そして冷たいあたしは大好きなあなたと二人で。
脆弱なコードに心をこめて生きたの、あたし。
あなたの腕の中。冷たい機械は短い生涯を静かに終えました。
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