あなたに降る夢

「せ〜んぱい。泳ぎに行きましょっ」
「ごめんなさい。今日はちょっと・・・」
「ぇー。なんか用事あるんですかぁ?」
「いえ・・・泳ぐのはもう・・やめたから・・・」
「受験・・・ですか?」
「そ」

尚香は残念そうな顔をしている。
水泳部に顔を出す事もこれから殆ど無くなるだろう。忙しいのだ。遊んでいる暇など無い。

「じゃあ、来週の打ち上げは?来てくれますよねっ?」
「打ち上げって・・・何の?」
「あ・・・そう言えば何の打ち上げなんだろう・・・ビバ!夏休み!って感じかな?」
「何よそれ・・・ん〜・・ま、気が向いたら顔くらいは出すかもね」
「先輩が目当てで来る男子もいっぱいいるんですよぉ〜」
「下賎の輩に興味は無いわ」
「えぇ〜勿体無いですよぉ」

甄姫は自分がイラついてきている事に気付いた。何故だろう?尚香はいい子だし、変な事も言っていない。
自分自身にイラついているのだろうか?よくわからない気持ちだった。
ただ、すぐにこの場を去りたかった。



家に帰ると、すぐにテキストを開く。基本的なことは大体マスターしているが、その程度では受験戦争に生き残る事は出来ない。途中で夕食を摂り、更に夜中まで勉強に励む。

静かな夜だった。
ふっと窓の外を眺めると人の暮らしの様が見える。
色々な人の色々な人生。甄姫から見ればそれは誰しもが大差の無い歩みだった。
知らない人たちの知らない人生。その他大勢の人々。

でも、私は違う。
私は人とは違う人生を送る。

本当に?
私自身も他人から見ればその他大勢に過ぎないのではないか。こんな勉強にどれ程の意味があるのだろうか。今、私と同じく勉強に励む人間が数え切れなく居る。

私はたった一粒の砂に過ぎない。
自分の存在の小ささにうんざりする。
勉強して、良い学校に入って、就職して、結婚して・・・それで?

やりたいことってなんだろう?
今、やりたいことってなんだろう?
将来、やりたいことってなんだろう?

そんな事、全然分らない。
他の皆はどうだろう?
尚香は水泳選手になるんだって頑張っている。彼女には夢がある。
夢に向っている彼女は甄姫の目から見ても魅力的だった。
彼女も不安になったりするのかしら?あきらめようと思ったことは?悩んだ事は?

他人のことを考えると更に不安になる。
他人と比べる事。馬鹿げているのかもしれない。でも。

私はこれからどうなっていくんだろう?
悩みから逃げるように勉強ばかりしている。
夢なんてわからない。

窓から見える景色。上半分は星空だった。
少し身を乗り出すとひんやりとした風が心地良い。
小さな星が一つ瞬いている。周囲の星に負けないように頑張るように。甄姫にはそう見えた。
飲み込まれそうな闇の中、精一杯に生きている。
どうしてそんなに頑張るの?
どうしてそんなに頑張れるの?

甄姫にはそんな小さな星が一番輝いて見えた。




ざぱーん。
プールで上向きに浮かびながら漂ってみる。
その日も星が見えた。
満天の星空は今にも降ってきそうだった。難しい事を考える必要なんて無い。
考えたって分らない。諦めるわけじゃない。ただ・・・。

私は、私だから。


「せんぱーい!何してるんですかっ!服着たままで!!」

校舎の窓から尚香が叫んでいる。
すぐに消えたと思ったらプールまで走ってやってきた。
「下校時間とっくに過ぎてますよ?って、何で制服のまま浮いてるんですかっ」
尚香は楽しそうに笑っている。こちらまでつられそうな笑顔だった。
「なんかね・・・そんな気分なの」
自分でも意味が分らなかったが、とにかくそんな感じなのだ。
「えぇ〜」

ざぶんっと盛大な音がした。
「ちょっと・・あなたまで何してるのよ」
「へへへ。私もそんな気分になっただけです」
尚香も甄姫のまねをして制服のままプールに飛び込み、ゆっくりと泳いでいる。

「ねぇ」
「はい?」
「水泳選手になる夢って、諦めそうになったこととかある?」
「どうしたんです?突然」
「んん・・・別に何でも無い」

ゆったりとした時間。
ここしばらく、こんなにゆったりと時を過ごした事はあっただろうか。
水。空気。宇宙。全部一つになったような感じがした。

「いくらでもありますよ」
「ぇ?」
「諦めそうになったこと。・・・でも・・私は泳ぐのが好きだから・・・」
「そう・・」
「先輩の夢ってなんですか?」
「私?私はねぇ・・・。ふふ。秘密」
「えぇ〜。ずるーい」

尚香は不満を口にしながら甄姫に水をかけた。
「きゃっ。何するのよ」
「へへへ。先輩、気付いてますか?」
「何が?」
「今日の先輩、すっごく奇麗ですよ。いつもより」
「・・・ばか・・」

もう、悩みとか不安とかは殆ど消えていた。全部とまではいかないけれど。ただ、下を向いて生きるのはやめようと思った。

「先輩、今日の打ち上げ来てくれますか?」
「あら・・そう言えば今日だったわね・・・びしょ濡れの制服でも良いかしら?」
「へへへ。先輩とお揃いだ。あ、あとで先輩の笛、聴かせてくださいね。久しぶりに」

受験勉強をはじめてからと言うもの、笛を吹く事も殆ど無くなっていた。
それでも毎日持ち歩いている自分を思い出し、少しおかしくなって笑った。









〜〜〜あとがき〜〜〜

ぇ、終わり?
無双関係ないじゃん(´゚д゚`)
年齢差?無視(ぉ
何故この二人にしたかって?
 直 感 で す (´゚д゚`)
キャラの性格は・・・(無言)(何
感情移入しにくいかも。評価しにくい作品でした。。
追伸:受験勉強なんかしなくていいじゃん!って云う意味ではないので、取り違えないでください。





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