真説〜心亡き者〜


前夜

大喬は愛する夫と毎日を過ごした。
何も応えてはくれない孫策。大喬は自分でも幸せなのか、不幸なのか、よくわからなかった。
孫策はそこに居る。紛れも無い事実。
孫策はもう居ない。それもまた事実。
大喬にはどうすることも出来ない。ただ、目の前の人形に愛情を注ぐのみである。
いずれ、大喬が人形を大事にしているということが周囲の者にも判るだろう。それは常軌を逸した行動かもしれない。

実際、孫策が死んだということになってから丸一年が経つが、大喬の目は常人のそれではない。頬はやつれ、いつも心は上の空。目だけがぎらぎらとしている。

「伯符様・・・伯符様・・・」

大喬は人形を抱きしめながら生前の孫策を思い出していた。抱きしめて欲しい。愛して欲しい。
するりと着物を脱ぐと、白く奇麗な素肌が現れる。少しばかり自分で胸を揉み、人形を押し当てた。

「伯符様・・・お願い・・・」

すでに屹立している乳首に孫策の口を近づける。
ぴくんと反応する大喬。だが、人形は依然として無反応だった。当然の事だが、大喬は不満である。
「どうして・・・?どうして伯符様ぁ・・・」

さらに右手で人形を胸に押し当てたり、こするように動かしたりする。左手は自分の下腹部へと向っていた。
「私・・もうこんなに・・・」
人形の前に左手をかざしてみる。指にはねっとりとした蜜が絡み付いていた。それを人形に擦り付けてみるが無論、人形は人形のまま。

服を全部脱ぐと、座り込んで秘所の前に人形を置いた。
「見て・・伯符様・・・」
躊躇無く小陰唇をめくり、あらわになった秘所を上下になぞるとくすぐったいような快感が走った。
時折、人形を性器にこすりつける。人形の感触は人間のそれとは全く違うが、それでも大喬はまるで孫策に愛撫されているかのような気分になり、行為は激しくなっていく。
「ああっ・・」
自分の指を挿入し、かき回すように動かすといやらしい音が部屋に響いた。それがまた大喬の劣情を煽る。人形で器用に蕾を刺激すると、摩擦の無いざらざらとした感触。大喬はその感触が気に入っているようで、執拗に人形の愛撫を繰り返す。
「はあっ・・ん・・・伯・・符さまぁ・・・聞こえ・・ますか?私・・・んっ・・」
孫策に見て欲しい。孫策と一つになりたい。愛し合いたい。

一年である。この一年間、毎夜のように大喬はこうやって自分を慰めていた。日によっては朝まで独りで耽っている事もある。
人形は毎晩、大喬の愛液にまみれるのだが、不思議と翌朝には奇麗になっている。やはりこれはただの人形ではないという事を示唆しているのだろうか。




第一夜。

ある夜の事だった。
寝ている大喬の瞼の裏に、一人の老人が現れた。その老人は静かに何かつぶやいている。
「もう忘れるのじゃ。過去を引きずる必要は無い」

次の瞬間、老人の首が飛んだ。斬ったのは孫策である。

「伯符様!」
大喬は孫策に駆けより、2人はきつく抱き合った。
「伯符様・・逢いたかった・・・ずっと。ずっと・・・」
大喬は孫策の唇を求めたが、顔を近づけると孫策の姿はふっと消えてしまった。

夢。
大喬はがっかりしたが、それでも少し嬉しかった。




第二夜。

同じ夢を見た。
昨日と同じように孫策に抱きつく。そして同じように唇を求めるが、もう少しの所で孫策は消えてしまった。




第三夜。

大喬は毎日同じ夢を見るようになった。
老人が現れ、何かつぶやき、そして孫策が現れる。

その日の夢で大喬はやっと孫策と唇を重ねる事に成功した。
ほんの1秒も無かったかもしれない。だが、大喬はその懐かしい感触に酔いしれた。




第十二夜。

未だに孫策は声を出す事も無く、動く事もない。大喬はいつものように孫策の唇をそっとふさいだ。
「んむ・・ん・・・」
ねっとりとした口付けをするが、依然孫策は無反応である。だが、大喬はおさまらない。孫策の手を自分の胸に押し当てる。
「ほら・・伯符様・・・こんなにドキドキしてる・・・」

上目遣いで誘うような表情を見せる。孫策にしか見せた事の無い、孫策だけが知っている表情だ。
手を離すと孫策の腕は重力に逆らうこと無く、だらりと下がった。
「伯符様ぁ・・・」



第十六夜。

大喬はすぐに下着だけを脱ぐと、孫策の腕をとって自分の下半身へと持っていく。
「触ってください・・・お願い・・」

本当なら今すぐにでも孫策と一つになりたかった。だが、きっといつか孫策の方から求めてきてくれると信じ、無理強いはしなかった。
孫策の指には全く力が入っていなかったが、孫策に触られているというだけでも大喬の身体は充分に感じていた。
孫策の指を立たせて花園を刺激する。

「ん・・・あ・・・」

孫策の指に蜜がからむ。服を着たまま、立ったまま、二人の指が花びらをまさぐる。孫策の指は懐かしい感触だった。
「あ・・ダメ・・・立ってられない・・・」

膝をがくがくさせながら、何とか状態を保とうとする大喬。孫策にしがみつき無理な体勢をこらえる事が、更に欲望を高めていく。
「ああッ・・もう・・少し・・ふっ・・・ん・・・もう少しだか・・ら・・・・」
顔を上に上げるとそこには無表情の孫策の顔。目線はどこを向いているのかもよく分らない。大喬はそんな孫策の指を使ってどんどん上り詰めてゆく。
「伯符様ぁ・・・どう・・してぇ・・・ねぇ・・・はぁッ・・い・・く・・・あああっ!!」
大喬の筋肉は孫策の指を離したくないかのように、膣口をきゅっと締める。孫策の指の形がありありと分る。

唐突に目が醒めた。
現実世界に帰ってきた大喬は下着がぐっしょりと濡れている事に気付いた。
大喬は当然のようにそこをまさぐる。いきなり指を入れても大丈夫なくらいに濡れていた。
この日から大喬は下着を穿かなくなり、少しでも時間があれば自分を慰めるようになった。起きている時間はずっと。常に快楽に溺れていたかった。



第二十三夜。

大喬はいつものように孫策に口付けると、そっと床に寝かせた。いつも床は固いが、この日は都合よく柔らかい床になっている。大喬の望み通りである。
もう、限界だった。我慢できない。
今日は孫策と一つになろうと決めていた。身体だけでも。

孫策の口、頬、耳、首筋に口付けながら、ゆっくりと服を脱がせていく。生前の孫策が大喬にしていたように。
何をしても孫策は無反応だった。孫策を愛撫する事で自分が感じている事に気付き、複雑な気分になる。大喬の身体は孫策を欲している。孫策に触れるだけでも大喬の性欲は強くなっていく。
それに対し、孫策は動かない。現実での人形と大して変わらない。

ただ、孫策の一番大切な所だけは違っていた。
大喬が手で握り、口に含むと見る見るうちに充血する。口に含んだまま先端を舌で刺激すると、それはびくんと反応した。大喬は嬉しくなって更に口を動かした。口から離し、自分の唾液を舐め取る。亀頭のほうを舐めるといやらしく糸を引いた。

「ん・・凄い・・伯符様・・・待ってくださいね。今、私の中に・・・」

そう言って大喬は孫策にまたがった。右手の中指と薬指で秘所を開き、孫策を受け容れる。孫策に奉仕するだけで欲情し、こぼれそうなほどに蜜を出していた。
「はぁっ・・・あぁ・・ダメ・・大きい・・・」
そう言いながらも少しずつ着実に挿入していく。息を止め、中ほどまで挿入すると一旦息をついた。
「はぁ・・はぁ・・伯符様ぁ・・・」
艶っぽい声で呼びかけるが、孫策は微動だにしない。
大喬はそのままゆっくりと奥まで孫策を受け容れた。
「ああぁぁん。すご・・い・・。ああっっ!中で・・中でまた大きくなって・・・ああん」

孫策はそこだけが敏感に反応している。そこだけが「生きている」という感じがした。

大喬は不満ではあるが、今は体の快楽が全身を支配している。
「あ・・奥まで・・とどいてる・・ふあ・・」
徐々に腰を動かしていく。上下だけでなく、こねるように動かしたり、浅く、深く。そして一番敏感な所を刺激するように動かす。
「あっ、あっ、あっ。伯符様・・ああっん・・気持ち良い・・あっ・・ふ・・」
腰を落とすごとに大喬の愛液がいやらしい音を立てた。
ゆっくりと動かしながら孫策の顔中に口付けると、無表情のまま大喬の唾液でてらてらと顔が光っている。
両手で自分の乳首をつまみ、快楽を貪っていく。自分が好きなように動けるため、大喬はすぐにでも達しそうになっていた。
「あっ・・ん・・私・・・私・・・だめぇ・・・いくぅっ!!」
びくびくっと全身を震わせながらあっけなく達してしまったが、まだ満足はしない。
「ねぇ・・ま・・・だ・・もっと・・・ねぇ・・伯符様も一緒に・・・はあっッん・・・あっ・・いい・・」
絶頂の余韻を味わう暇も無く更に激しく腰を動かし始める。
「ぁ・・また・・・はん・・あっあっ・・・お願い・・一緒に・・やっ・・あああぁぁっっん!!」
すぐさま2度目の絶頂を迎えると、それに呼応するように孫策もまた大喬の中に放った。その暖かさは夢とは思えなかった。大喬は孫策と繋がったまま余韻を味わう。少しすると精液が膣口から溢れ出してくる。それを指で拭うと愛しそうにそれを舐め取った。

孫策が動かなくとも、これが夢である事が分っていても、それでも大喬は一時的に肉体的満足感を得る事ができる。
だが、一方的ではなく、孫策の方から愛して欲しい。その欲求は高まるばかりだった。




第三十四夜

少しずつだが、夢が長くなっている。
大喬もそれに気付き、毎日が楽しみになっていた。たとえ夢の中とはいえ、孫策の体温を感じる事が出来る。

「大喬・・・??」

その日、とうとう孫策はその口を開いた。
思わず駆け寄って飛びつくと、孫策もまた大喬をきつく抱きしめる。

「お願い・・・私を・・私を・・・」

大喬はうっすらと涙を浮かべながら、懇願する。何でもいいから、とにかく孫策の愛を感じたかった。
「滅茶苦茶にしてください・・・お願いです」
「分っているよ。大喬」

孫策は優しくそう言って大喬の口をふさいだ。唇を舐めるように口付けると大喬の舌が孫策に絡みつこうとする。
うっとりとした表情を浮かべ、頬を紅潮させる大喬。
孫策の舌が大喬の口の中へと侵入し、大喬の舌の裏側に絡みつくと大喬の方は孫策の前歯や口の天井を優しく撫でる。
「はむ・・ふ・・ん・・・」
息が苦しくなってきたのか、どちらからとも無く唇を離すと銀色の細い橋が架かる。
大喬はそれが落ちるのが勿体無いかのように手で受け止めて自分の顔に擦り付けた。

「伯符様ぁ・・・」

孫策は再度その口を塞ぐと大喬の着物を剥ぎ取り、形の良いふくらみを掌に収めた。
中央の突起を避けるように口付ける。
「やぁっ・・・じらさないでぇ・・・」
大喬は全く我慢が出来ないでいる。性欲を素直に口に出して快楽を求める。
「大喬・・・素敵だよ・・・」
孫策はそう言って胸の突起に吸い付いた。
「ひああっっん!」
大喬は大袈裟なほどの声を上げる。
「伯符様・・あん・・・」

孫策は中腰の状態が辛くなったのか、ゆっくりと大喬を寝かせる。胸だけをあらわにして横たわり、身体を上気させている大喬。そしてそのあまりにも淫靡な表情に孫策の欲望はぐんぐんと高まっていく。
再度大喬の乳首に吸い付く。ちゅぱっ、ちゅぱっと音を立てながら愛撫するとそのたびに大喬は嬌声を上げる。胸だけでも絶頂を迎えられるのではないかと錯覚するほどだった。
手で胸を触りながら口は少しずつ下へ下へと移動していく。大喬は脇腹でも感じるらしく、甘い声を漏らす。
下着だけを残して全て脱がせると股を開かせた。大喬は何も言わずに自分の両足を手で固定する。

「凄いな大喬・・・まだ何もしてないのに」
「あん・・・恥ずかしい・・・」
「そんな格好で言われても説得力無いぞ?」
「やだぁ・・いじわる」

下着の上から割れ目をなぞるように触るとびくんと身体をのけぞらせる大喬。

「もう感じてるのか?」
孫策は分り切った質問をあえて投げかける。
「だってぇ・・」

胸に吸い付きながら激しく手でこするとさらに湿り気は増し、下着の上からでも孫策の指にねっとりと絡みついた。

「ひっ・・・ああん・・・気持ちいい・・・ふぁっ」
「凄いな。もっと感じていいぞ・・・」
「ああっ!!だめぇ・・お願い・・直接触ってくだ・・・あっ・・・い・・・」
「よし」

孫策もだいぶ息が荒くなっている。
足をつかんでいる手を離させると、下着をずらしていく。可愛らしい恥丘が見えると同時に大量の愛液が糸を引いた。
「こんなに感じて・・。嬉しいよ、大喬」

孫策は女陰に顔をうずめると、大雑把に舌を這わせた。ヒクヒクといやらしくうごめいている。
指で陰核をつまむと大喬は逃げるように腰を浮かせた。
「いやぁッ。ダメ・・」
「気持ち良いんだろう?ほら」
そう言うと包皮を剥いてあらわになった蕾をちろちろと舐める。
「ああッ・・!そんなにしたら・・・ひぁっ!」
前歯で甘噛みしながら舌先で激しく弾く。
「だめぇ・・・い・・く・・・いっちゃいますっっ!!」
大喬は絶頂を迎えたが、孫策は愛撫をやめるつもりは無かった。
真っ赤に充血した陰核を少し触るだけで大喬はまたすぐに感じ始めた。

「ははっ。敏感になってるな。可愛いぞ、大喬」
「やぁっん。あっ。はっぁん・・・そんなの・・だめぇ・・・」

くりくりと指でつまみつつ、膣内を舌で犯していく。淫らな液がとめどなく溢れ孫策の呼吸を妨害するが、それでも何とか愛撫を続け、愛液を全て飲み込むかのように吸い付いた。
「はあああっっ・・・ダメ・・伯符様ぁ・・・また・・・ああんっっっ!!!」
「何だ大喬・・・またいったのか?いやらしいな」
「だってぇ・・・ひああっっ!」
孫策は休むことなくおもむろに二本の指を挿入した。
ぐりぐりとかき回すとそれに合わせてぐちゅっ、ぐちゅっと卑猥な音が広がる。

「気持ちいいのか?ほら・・ここはどうだ?」
そう言って中で指を曲げると、天井をこすり始めた。
「ああッッッ・・そこ・・・気持ちいいのぉ・・・ああん・・もっとぉ・・・」
孫策は指を動かしながら、大喬の耳たぶにそっと口付ける。大喬は全身が性感帯になったかのようにぴくぴくと反応する。
「あっ・・ん・・・ま・・た・・・いきそ・・・はぁん・・・」
「おっと・・・まだいっちゃダメだぜぇ」
そう言って何度か大喬の絶頂を阻止する。達しそうになるたびに動きを止めて焦らすときゅっきゅっと筋肉が小さく痙攣する。
「やぁッ・・・いきたい・・のぉ・・・伯符様ぁ・・・」

いやらしく哀願をしながら身体をねじらせる大喬。17歳の娘とは思えないほどだった。
今にも泣き出しそうな目で孫策に訴えかける。

「ほら、もっとお願いしてごらん」
「あはぁん・・おねが・・いです。我慢できない・・のぉ・・・いかせて。ひっ・・ん・・・いかせて・・ください。お願い・・伯符様・・」
孫策はにこりと笑った。
「いい子だ。大喬。愛してるよ」

一度だけ軽く口付けると親指で陰核を弾きつつ、膣内を激しく刺激した。
きゅうっと大喬の筋肉が収縮する。
「ああッ・・・いくっ・・そこ・・いいっ・・・ああああん!イクぅっっっ!!!」
大喬が絶叫を上げると、孫策の腕に多量の潮がかかった。それでも尚激しく腕を動かし、大喬を快楽の底へと導いていく。
「ひああっっ!だめぇっ!止めてぇッ!!はああああっっ!!!」
とめどなく潮を吹くとようやく指が抜かれた。

「こりゃひどい。粗相をしたね、大喬。悪い子だな」
そう言って腕を上げると大喬の腹部にぽたぽたと雫が落ちた。
「あっ・・はぁ・・ごめん・・なさい・・・だって・・」
「おぉっとぉ。言い訳は無しだぜ。お前も俺ので汚してやるからな」
そういうと孫策は大喬の上体を起こして着物を脱ぎ、既に熱くなっている陰茎を大喬の顔に近づけた。それを大事そうに両手で支える大喬。

「伯符様の・・」

孫策は大喬の両手を振り払うようにして、陰茎で頬をペチペチとはたいた。
少しばかり先走った液が糸を引く。はたから見ればおかしな光景だが、二人はそれを楽しんでいた。

「ほら、大喬。口で捕まえてごらん」
「はっ・・ああん・・伯符様の意地悪」
しばらくそうやって遊んでいたが、孫策が腰の動きを緩めた瞬間を見計らって口で捕らえる事に成功した。
「ふかまへまひたぁ」
もごもごと言葉を発する大喬。
「よしよし。好きなようにしてみろ」
孫策は頭を優しくなでながら言った。
「はひ・・・ふ・・ん・・・むんん・・・」
首を大きく前後に振ると勢いで喉の奥まで届きそうになり、嗚咽を漏らす。
「慌てなくてもいいからな」
一旦口から引き抜ぬくと頬擦りする。
「伯符様の、あったかい・・・」
陰茎を持ち上げると、裏筋に舌を這わせる。ぴくぴくと反応する孫策。
「気持ちいいですか?伯符様」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら上目遣いに孫策を見やる。
「ああ。良いぞ。続けてくれ」
今度は手で陰茎を刺激しつつ、陰嚢に吸い付く。毛が邪魔だったが、あまり気にならなかった。
「あんまり強くしないでくれよ・・・」
「ふふ。大丈夫です」
孫策はビクンビクンと脈打っており、大喬にはそれがたまらなく愛しかった。手を離すと腹部まで届きそうなほどそそり立っている。
「やだ・・伯符様ったらこんなに・・・」
「お前が上手いからだよ」
「本当ですか?嬉しい」
そう言うと大喬はそれをくわえ込み、口をすぼめる。きつく吸い込むようにすると孫策の手が力強く頭を抑える。
「くッ・・良いぞ・・大喬・・・」
そのまま前後運動を再開すると更に孫策の手に力が入った。
「出すぞ・・・っっ」
どくんっと脈打つと口の中に精液が流れこんできた。肉棒を咥えたまま、喉に絡むのを何とかこらえつつゆっくりと飲み込んでいく。
出し残しの無いように全てを吸い出そうとする。孫策が引き抜こうとするが大喬はそれを許さなかった。

「おいおい大喬。もう出ないよ・・ほら・・放して」
「はん・・んん・・・」

漸く引き抜くと孫策はワシワシと大喬の頭を撫でる。
「偉いぞ。よく全部飲んだな」
「ぁん・・・伯符様のぉ。美味しいのぉ・・もっと・・・」
いやらしい声を出しながら再び手を添えようとする大喬。孫策はそれを素早く制した。
「おっと、今度は一緒に気持ち良くなろうな」
「はい・・伯符様と一緒に・・」

期待が全身を貫き、大喬の下半身が熱くなった。

「さぁ、四つん這いになってお願いしてごらん」
大喬は何の躊躇も無く言われたとおりの格好になり、指で膣口を広げながら淫らな表情で孫策を見つめた。
「お願いします・・・伯符様のを私の中に入れて・・いっぱいかき回してください・・あぁん・・恥ずかしい・・」
「だから説得力無いって」

孫策はくすくすと笑い、尻を両手で支えて一気に挿入した。
「はああぁぁっん!」
腕に力が入らなくなっている大喬はがくっと上体を落とした。
孫策は大喬の乳房を揉みしだきながら体を支え、奥まで突く。
「ああっっ。あんっあんっ!ひん・・ぅぁあ・・」
えび反りになりながら大声を上げる大喬。
「くっ・・締まる・・」
ぱんぱんっと肌を打つ音と、くちゃくちゃというねっとりとした音が響く。

「凄いな大喬。聞こえるか?」
「ああッ・・伯符様ぁ!伯符様ぁ!」
快楽に全身を支配されていて殆ど理性が残っていない。それでも愛する者の名前を呼びつづけた。
「よし・・・今度はお前が動いて良いぞ」
動きを止めると、繋がったままひょいっと大喬を持ち上げて逆騎乗位にする。おもむろに腰を振り始める大喬。
「ふふ。大喬。つながってる所が丸見えだぞ」
「やぁん・・見ちゃだめぇ・・」
そう言いながらも大喬の腰の動きは激しくなっていく。愛液が飛び散り、孫策の身体を濡らした。
「あぁッ・・伯符様ぁ・・私・・・私・・・」
切ない声を漏らす。
「またいきそうなのか?だらしないな」
「ああッ・・・ごめんなさい・・・ふっ・・ん・・」
「ちょっと腰を浮かしてみな」
「あ・・はい・・」
「よし、そのまま動くなよ」
その状態で上下運動を開始する孫策。鍛えられた腹筋を十分に活かして大喬を突き上げる。
「ああッ!!凄いっ・・・奥まで・・奥まで届いてるっっ!!」
何とか腰を浮かせたままの大喬に電撃が走る。
「伯符様っっ。ひあああっっ!!!」
身体をのけぞらせながら達するとがくっと腰を落とす。無論、繋がったままなのでそれがまた快感を呼ぶ。
「はあぁあぁん」
「すっかり淫乱だな、大喬」
「やあぁん・・何も知らない女の子を・・はん・・こんなにしたの、あっん・・伯符様ですからね・・」
「そうだったかぁ?」

懸命に腰を振りつづける大喬。

「ねぇ、伯符様・・お顔見せて・・・」
「そうだな。俺も大喬の顔が見たい」
そう言って大喬を仰向けにさせて挿入する。舌を絡め合わせるとこの上ない一体感を得た。更に大喬は両足を孫策に絡め、腕でも抱きしめた。
「ああっ。伯符様。好き。大好きっ」
「俺もだ。大喬っ」
「ああっ・・・あん・・あ・・ああああっっっ!!!」
「大喬・・・いくっ・・」
大喬が達すると孫策もそれに連動する。
孫策は大喬を抱きしめ、再度口付けた。
「私・・幸せです。伯符様・・」
大喬は一粒の涙をこぼしながらつぶやいた。

すぅ・・・・っと孫策の姿は消えてしまった。
まるで何事もなかったかのような静寂。真っ白な空間。どこまでも果ての無い。白の宇宙。
まるで大喬の存在の小ささを見せつけるような。
空間に押しつぶされそうな感じがした。
私は・・・私は、愚かだろうか?





第48日、朝。

夢から覚めたはずなのに、少し違っていた。
口の中に、誰かが侵入していた。夢の中で孫策とコトを終えたばかりの大喬は夢の続きでも見てるかのように舌を絡めていった。
「んふ・・・ん・・はぁ・・・む・・」
小さな舌はまだ慣れていない様で、おどおどとした動きである。何となく愛らしい。
息苦しくなったのか、相手は口を放した。どうやら大喬が目覚めた事に気付いていないらしい。
大喬もどうして良いか分らず、目を閉じたまま寝たふりを決め込んでいる。
相手は大喬に馬乗りになっているようだが、何故だか恐怖心や警戒心などは全く起こらなかった。
今度は頬に口付けされる。
すると信じられない言葉が聞こえた。

「おねえ・・ちゃん・・・」

それは間違いなく小喬の声。
でも・・。
わけがわからなかった。

そっと目を開けると、確かに小喬がまたがっている。
大喬は寝る時は薄い着物一枚しか着ておらず、朝起きると決まって全裸になってしまっている。今日も当然のように何も身に付けていない。
部屋には大喬の汗と愛液の匂いが充満しており、外からは完全に隔離された別世界のようである。

そんな中に小喬の吐息が混じる。

大喬の胸のふくらみに手を添えてふにふにと触っている。
上半身だけはだけている状態の小喬は自分の胸も触っているようだ。
突起を指でこねると小首をかしげる小喬。

「う〜ん・・気持ちいいとか全然分んないよぉ・・・」

今度は大喬の胸の頂に触れる。
「お姉ちゃんいつも自分でこうしてるよね?気持ちいいの?分んない・・・」

くりくりとこねられると大喬は反応してしまう。先端は堅くなり、わずかに声が漏れる。
「お姉ちゃんったら寝てるくせに、やらしぃんだぁ」
楽しそうに笑いながら小喬は顔をうずめ、ふくらみに吸い付く。
その口はすぐさま頂へと走る。ちゅぱちゅぱと吸い上げられると快感が走った。
「はぁ・・ん・・」
「すっごーい。お姉ちゃん、感じやすすぎー」

決して上手いわけではないが、大喬の身体はあまりにも敏感になっていた。
乳首を舌で転がしつつ、空いた胸を掌で包む。
楽しくなってきたのか、指や舌の動きが激しくなってくる。
しばらくすると唇は胸を離れ、肩へと移動する。小喬の右手は大喬の左手をしっかりと握りしめている。

私は何をしているのだろう?
実の妹に愛撫され、熱い吐息まで漏らしている。しかも、もっとされたいとさえ思っている。
起きている時間は隙を見つけては自慰に耽り、眠ってからは孫策と熱い一時を迎える。そして朝はその余韻に浸りつつ下腹部に手が伸びる。
自分でも孫策に対する愛情なのか、ただ性欲にまみれて居たいだけなのか分らなくなってくる。

「ここはどぉなってるのかなぁ?」
小喬はそう言って少し移動すると、茂みを掻き分ける。
大喬は不味いと思った。そこを触られるともう眠っているふりなど出来ないかもしれない。しかし、どうして良いかわからない。
「わぁ・・びちゃびちゃだ。すっごぉい・・おもらしみたいだよぉ」
小喬は小さな声でそう言うとそこをぴらりと指で広げる。初めて間近で見る女陰に釘付けになっているようだ。
妹に視姦され、ヒクヒクといやらしくうごめく。

「あはっ。お豆さんだ」
小喬は唐突に陰核をつまんだ。
「ひあっ、だめぇっ!」
思わず声が出てしまった。しまったと思ったときにはもう遅い。
驚いて目を見開いている小喬と完全に目が合った。
「おねえ・・・ちゃん・・??」

全裸で愛液を垂れ流している姉と半裸で姉の陰部を覗き込む妹。どう考えても異常な光景である。
「あ・・あの・・あのね・・私・・・その・・・」
慌ててはだけた着物を調えようとしている。こっちはあられもない格好で横たわっている。その対比が少し可笑しかった。
「ご・・ごめん・・・あの・・だから・・・」

顔を真っ赤にしてうつむいてしまう小喬。妹の事ながら、何と可愛らしい事か。
大喬は体を起こすと、小喬の唇を塞いだ。下唇に吸い付いてみると、柔らかい感触。
閉じられている口を舌でゆっくりと開いていく。小喬は素直に姉の舌を受け容れたが、どうして良いかわからず、固まってしまっている。
一旦唇を放す。とろんとした表情がまた可愛い。頬や唇にちゅっちゅっと軽い接吻を繰り返す。

「んん・・おねぇちゃん・・」

もう一度舌を侵入させると、今度は小喬からも動きを見せた。大喬の舌の動きを追いかけている。
伯符様は私とするときこんな気持ちになるのかしら?そんな考えが浮かんだ。
ぴちゃぴちゃと音を立てながら何度も何度も口付ける。

「ねぇ、小喬?」
甘ったるい声が出る。
「周瑜様とは、もう、したの?」

何故こんな質問を投げかけているのか、自分でもよく判らなかった。

「え・・あの・・ちゅーはいつもするけど・・」
もじもじと恥ずかしそうに上目遣いの小喬。大喬の心の中のどす黒い欲望がどんどん大きくなっていく。
「そう・・じゃあ、お姉ちゃんとしよっか」

自分でも信じられない言葉が口から出ていた。もう大喬の欲望は抑えられない。自分でも分かっている。

「え・・なな・・何・・・姉妹で女同士で・・だから・・」
混乱する小喬。

「ね?気持ちよくしてあげるから。周瑜様とするときの練習と思えばいいわ」
そう言って小喬の着物を脱がしていく。
迷いなく胸の中央に唇を持っていく。
「ひゃぁ。くすぐったいよ」
逃れようとするが、大喬はぐっと抱きしめて放さない。しばらくの間、執拗に攻めつづける。
小喬は大喬の首の後ろに腕を回しているが、徐々に力が強まっている。
少しずつであるが、くすぐったさが快感に変わっているようだ。大喬は当然のように自分の秘所をまさぐっており、熱い吐息を漏らしている。
そんな大喬の表情が小喬にも僅かながら影響を与えているようだ。

「んん・・・ちょっと・・気持ち良いかも・・・」
「んふ。もっと気持ちよくしてあげるね」

胸への愛撫を続けながら服を脱がしていく。
「やぁっ・・恥ずかしい・・・」
「女同士でしょ、何言ってんのよ」
自分自身の言っていることもおかしいが、関係ない。
「ほら、横になって」
「う・・うん・・・」

全裸になった小喬の足をおもむろに持ち上げる。
「きゃっ!やだっ、だめっ」
大喬はまるで自分が男になったかのような気分だった。小喬を犯したい・・・そんな欲望があふれ出てくる。

小喬のそこはとても奇麗な色をしていた。
「奇麗よ、小喬」
「やあぁん。だめぇ」
「ほら、よく見て」
そう言って小喬の腰を強制的に浮かせながら持ち上げた脚をぐぐっと押し倒していき、小喬自身の陰部が見えるようにする。小喬は真っ赤になりながら顔を背けてしまう。
「やめてよぉ・・やめてぇ・・・」
「ほら、お尻の穴も丸見え」
「やぁぁ。お姉ちゃん・・」

大喬は完全に楽しんでいた。何も知らない自分に快楽を植え込んだ孫策の気分。
唾液を塗りこむように舌を這わせていく。小喬は恥ずかしさとくすぐったさに身体をよじらせ、何とか逃れようとするが許さない。
「駄目よ小喬。ちゃんと見て。私のだけ見て自分のは見ないなんてずるいわよ」
「だってぇ・・・」
「ほら、とっても奇麗。それにほら、こうするとくちばしが出てくるわよ」
そう言って陰核を剥き出しにする。
「あん・・お豆さん・・・」
何故だか知らないが、小喬はこの「お豆さん」がお気に入りのようで、自分のそれを恥ずかしそうに眺めている。
「とっても気持ちいいところよ。ほら」
きゅっとつまむと、小喬は更に腰を浮かせた。
「きゃうっ!やっ、あっ」
「中は周瑜様のために取っとくからね。ここで気持ちよくなって」
「やぁっ・・変な感じだよぉ・・・」
こちらの目を見つめながら訴えかけてくる小喬。
「ほら、お姉ちゃんが舐めてるとこ、ちゃんと見てるのよ」
「ん・・うん・・・」

まだあまり濡れてはいなかったが、大喬は唾液を絡めてくちゅくちゅと音を立てながら刺激していく。
「まぁ、小喬ったら。なんていやらしい音。恥ずかしい子ね」
「やだあぁぁ。お姉・・ひぁっ・・あっ・・・ふぅ・・・」
小喬をいじめるような言葉を吐きながら、辱めていく。
「ああん、だめっぇぇ・・・お豆さんが・・・はぁはぁ・・んん」
小喬の中で、羞恥心が快楽へと変わっている。女陰が舌で犯されているのを瞬きもせずに見つめながら嬌声をあげる。
大喬は膣口に舌を挿入したいのを何とかこらえながら愛撫を続ける。

「凄い・・小喬。いっぱい溢れてきたわ」
「ああん・・だって・・だってぇ・・・・ひぁっ・・・あん」
小喬の表情がだんだんと切羽詰ってきている。
「何か・・・あっあっ・・・変だよぉ・・お姉ちゃん。何か・ふぅ・・ん・・・・何か・・・」
「気持ちいいの?いきそうなの?」
「ああっ・・はぁっはっん・・・ふぅっ・・駄目・・・あたし・・いっちゃうの・・??・・ああっ」
「いいわよ。もっと気持ちよくなって」

小喬の好きな陰核を集中的に責めると更に声が大きなる。泣きそうな声にも聞こえた。

「おねえっ・・ちゃんっ・・・ひぃっ・・くぅ・・・もう・・もう・・・」
甘噛みを繰り返すと小喬はついに涙をこぼした。
「駄目っ・・あっあっ!そんなの・・・あっっ・・・あああああっっ!!」
全身をこわばらせて生まれて初めての絶頂感を味わう小喬。
ひっくひっくと、しゃっくりを繰り返しながら泣いてしまっている。大喬は静かに彼女の脚を降ろし、顔を覗き込んだ。
「ごめんね、大丈夫?」
「う、うん。大丈夫だよ・・・。すっごい・・気持ちよかったよ」
「そう。じゃあ、今度は周瑜様と・・・ね?」
「え・・あ・・うん。何か・・・恥ずかしいね」

部屋には二人分の淫靡な香りが漂っている。外を見れば明るい日差し。このような時間から血を分けた妹と甘い時間を過ごした事に罪悪感のようなものが浮かんだ。

ただ、ぬくもりが欲しかっただけではないのか?
ただ、性欲を満たしたかっただけではないのか?

私は孫策に何を求めている?
愛って何?
愛って何?
愛って、何?
考えても何もわからない。
ただ、身体が疼くのだ。
ただ、それを慰めたいのだ。それしかわからなかった。




第142日



2人は夢の中で愛し合った。
大喬にとって、もはやこの夢こそが現実である。出来る事なら1日24時間、ずっと眠りつづけたいと願うほどだ。
目が醒めてしまう自分が口惜しい。

寝る事を最重要視するようになってから、大喬はますます不健康に痩せていった。だが、現実での自分の姿に大した興味は無かった。
夢の中の自分は孫策が消えた時の自分のまま。ずっと若さと美しさを保てる事は彼女にとって好都合な事だ。2人はずっと変わらないまま愛し合う。
これは究極愛ではないのか?
そう思うようになった。

大喬は一つの簡単な案を思いついた。

現実は邪魔なのだ。ならば、消してしまえばいい。
簡単な事だ。ただ、死ぬことで孫策と永久に一緒に居られるではないか。
今日、夢の中の孫策に話そう。きっと喜んでくれる。

その夜。
大喬はなかなか寝付けなかった。

ふっと、音が消えた。

何かの気配を感じ、体を起こす。
そこに見慣れた老人が立っていた。夢に出てくる老人である。
「もう、終いにしよう」

大喬はこの老人をよく知っていた。
夢の中に出てくるからではない。元々有名な人物なのだ。

于吉仙人。

天候を自由に操り、人の天命を見透かす者。
孫策の手によって死んだ者。

「よく聞くのじゃ」
于吉は静かに語り始めた。


過去、短い間だが孫堅に世話になった于吉はお礼に孫策の未来を占った。結果、孫策は人生で2度、大いなる危機に当たると出た。
1度目は于吉の神通力が功を奏し、孫策は生き長らえた。
2度目は孫策の夢の中に現れ、暗殺の危険をほのめかした。
だが、孫策はその言葉に耳を貸さなかった。于吉の事を迷信を振りまき民を混乱させる賊だと罵り、部下に捕らえさせた。だが、民や他の兵たちも于吉の事を信じきっている。斬り殺すわけにはいかなかった。
そこで孫策は于吉に一つの命を下した。昨今雨の降らないこの地に潤いを与えてみよというのだ。
民たちは喜んだ。これできっと孫策も于吉のことを信じてくれる、と。
だが、于吉本人はそうではなかった。「己の運命は変えられぬ」と。周囲の誰もその意味はわからなかった。

于吉が雨乞いを始め半日が過ぎると豪雷とともに大雨が降った。みな、大喜びした。
だが、あまりの雨の量に今度は洪水の心配が出てきた。
すると于吉は更に祷り始め、たちまち雨はやんでしまった。
孫策は苦々しそうだった。

その日の夜、また孫策の夢に于吉は現れた。夢の中で孫策は于吉の首を切り落とした。それは確かな手ごたえを持っていた。
体を起こすとそこに于吉の死体が転がっていた。

その後于吉の予言通り、孫策は狩りの最中に毒矢で射抜かれた。
華陀の治療により孫策は回復の兆しを見せていたが、それは予定されていたものだった。回復した孫策は戦を前に全身から血を吹いて死ぬ予定だった。

しかし、于吉は考えた。もし、そんな事になったら妻である大喬はどうなるだろう?于吉の言葉を信じずに命を落とす孫策の巻き添えを食らうような形で、自害など考えるのではないか?
それは忍びなかった。

于吉は孫策の形だけをこの世に残す事を考えた。それが、あの人形である。
だが、それもまた大喬に悪い影響を与えた。
夢の中で愛をむさぼるようになり、更には死を望むようになった大喬。それは于吉にとって心外な事である。

今日、于吉は二人の関係を完全に断ち切る為にここに現れた。

「まさか・・・」
「この人形とは今日でお別れじゃよ。その人形が消えれば、おぬしの忌まわしい過去、記憶もきれいに消える。さぁ、人形をこちらへ」

大喬は断固拒否した。

于吉は掌から炎を出した。その炎は何の迷いも無く人形へと向っていった。
人形は瞬く間に燃え始めた。しかし、大喬はその人形を手放そうとしなかった。
「馬鹿な。すぐに人形を離すんじゃ。おぬしが大怪我をするぞ!」
「いやよ!絶対にいや!」
炎はすぐさま大喬の服に燃え移った。炎は容赦なく大喬を包む。
「あああぁあぁぁぁぁっっっ!!!!」
悲痛な叫びを上げる大喬。
「いかん!」
于吉が叫ぶと、火はまるで何も無かったかの様に消えた。
さらに大喬の体を光が包んだ。火傷どころか、やつれた体が健康的に蘇った。
やつれた頬には紅が差し、うつろな瞳はパッチリと可愛らしく見開かれる。筋肉も脂肪も殆どついていない痩せこけた身体はふっくらとした弾力と、相反する張りを取り戻す。
「あ・・」
「何故じゃ・・・何故、人形を離さなかった・・・」
大喬は呆然としていたが、その胸にしっかりと孫策人形を抱いている。
「だって・・・私は伯符様を愛しているから・・」
「よく見るのじゃ。それは孫策などではない。孫策の形を真似た、ただの人形じゃ」
于吉はそれを指差しながら言った。

自分の腕に抱かれた人形を見やる。その可愛らしい人形は・・・いや、人形ではなかった。大喬にとって、これは紛れも無く孫策なのだ。
「いいえ于吉様。人形などではありません。この方は伯符様なのです」
大喬の目によどみは無かった。
「おぬしが死ぬかもしれなかったのじゃぞ?」
「構いません。伯符様と共に往けるなら、それは本望です」

于吉は目を見開いた。
「素晴らしい。しかと見届けた」

そう言うと于吉は光に包まれた。それは余りにも眩しく、大喬は目を開けていられなかった。
「どこか遠くへ。幸せになるが良い・・・」
光の向こうから声が聞こえた。

徐々に光が弱まってきた。一体何が起こったのだろうか。
ゆっくりと目を開けてみるが、視界がまだ真っ白で何も見えない。少しずつ部屋の風景が見えてくる。
そこに何か見えた。
横たわるような影はゆっくりと立ち上がったようである。

大喬は思わずそれに飛びついた。
この手触り、体温、におい、鼓動。それはまさしく・・・・。




戻る

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送