第1章〜とむらいの夜〜

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「おい!ライタ!!しっかりしろ!」
 うつぶせに倒れていたライタを起すと、彼はゆっくりと目を開いた。
「フリント・・・トマスも・・・ち・・くしょう・・・ゴホッ・・・・・あいつら、やっつけてもやっつけても出てきやがる・・」
「あいつら・・・??」
 ライタが力なく指差した方向に、なにやら小さな黒い影が落ちている。
「・・・何だコリャ?虫??」
 トマスがそれを突付いてみるが、動かない。死んでいるようだ。しかしトマスもフリントもそんな虫は見たことがない。いや、特に変わった形をしているわけではなく、ちょっと大きめのハエのような虫なのだが・・・・。
「わからねぇ。でも、こいつ・・らが、森・・に、火を・・・・つけてまわってんだ」
「この虫が??」
 口から小さな火の玉を吐き出し、木々を燃やしているのをライタは目撃したという。片っ端から叩き潰しはするのだが、かなりの数が飛び回っているらしく、それに一度ついた炎はそう簡単には消えてくれない。今はまだ火の回りが遅いが、この虫が活発に放火をしてまわればそうも言ってられなくなる。現に、トマスの目には山火事の進行が速くなっているのだ。
 豚面があけた箱にはこの虫が入っていたのだろうか・・?フリントの中で、怒りがドンドン込み上げてくる。
「それより・・・フリントよぉ・・・・・ゴホッ。フエルがまだ小屋にいる・・筈な・・・んだ・・。頼む・・・・」
 虫退治に夢中になってたのだろう。ライタらしいと言えばライタらしい。
 フエルはフリントの親友であるライタの息子であり、リュカとクラウスの大事な友だちでもある。それはつまり、フリントにとっても大事な子供なのだ。命の二つや三つほど賭けるには充分すぎるほどの。
「わかった。任せろ。トマスはライタを連れて先に戻っていてくれ」
「うん。ぜったい戻って来るんだよ」
「当たり前だ」





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